ゆき・ちの見た夢

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ゆき・ちが行方不明になってどれくらいが経ったのだろう。
突然ゆきちから郵便が届いた。




あれは2年前

アストルティア花火大会の夜
「普通の花火は確かに綺麗。・・・だけど私思うの。もっともっと綺麗な花火を作って、この夜空に七色に輝く花火を打ち上げる!」
「火薬と魔力を融合させるのよ!」

その時の彼女の横顔は夜空を真っ直ぐに見つめ、目に映る花火の奥に新しい可能性を見ていたのだろう。
ゆきちは”魔導花火士”という新しいジャンルを開拓すると言った。

「いつ帰ってくるか分からないけど、その時は七色の物を送るね!」
そう言って旅に出た。





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送られてきたのはプリズニャンの書
私は思わずにやけてしまった。

七色の物=プリズム(七色)=プリズニャン


きっとこの広い大空のどこかで、ゆきちも空を眺めている。
「ゆきちが帰ってくるんだ!」










港町レンドア


レンダーシア大陸への玄関口として貿易を中心に発達した港町レンドア。
レンダーシア大陸へのドアという意味合いらしい。

今では落ち着いた街並みだがゴールドラッシュ当時のレンドアは幾つもの大手企業の本社が連なり、夢を追い求める人々が集まり素晴らしい活気に溢れていてた。
アストルティアのファッションなどの流行はレンドアが発祥と言われ、レンドアに住むお洒落な若者はレンドアーゼ、又はレンド族と呼ばれていた。
流行を表すトレンドという言葉はgo to Rendoa からの造語と言われている。
駅の地下には食べ物屋さんが並び、昼休みになると近くで働くOLが集まり、駅の地下街は通称エキチカと呼ばれ賑わっていた。


時代が流れ

あんなに賑わっていた街も少しずつ落ち着いていった。
ゴールドラッシュ当時を知っている年配の人々は口を揃えてこう言った。

「あの時もっと飛び込んでいれば良かった。」




今ではガランとした駅構内を歩きながら、当時賑わっていたエキチカの妄想話をして、ゆきちと歩いたのを覚えている。

そんなレンドア駅の近くでゆきちと待ち合わせをした。





「やぁ…。元気?」

約2年ぶりに会うと、お互い少しのぎこちなさを感じた。

「うん。元気だよ。」
何故だか目を逸らしてしまった。なんで恥ずかしいのだろう。
ゆきちは何と言うか、たくましくなった。自分で道を切り開き、自信に満ち溢れている風だった。
沈黙が走る。


「あのさ…」
「あのね…」

言葉が被り、思わず爆笑してしまった。



「じゃあ、早速だけど私の旅の成果を見せてあげるわ」

そう言ってゆきちは花火の入ったツボを取り出し呪文を唱える。
その真っ直ぐな横顔は2年前に見たキラキラと夢を見つめるゆきちそのものだった。

私ね…何度も何度も失敗したの。その度に私にはセンスがないんだなって落ち込んだわ。
でもね
火薬が爆発する瞬間
とても “美しい何か” が見えたの。
それはほんの一瞬でそれを掴もうと思うんだけども、それは絶対に手が届かないの。
でも試しに火薬が爆破する瞬間、“美しい何か”に私の魔力も一緒に入れて爆発させてみたの。
そしたら何か分からないけど成功して、七色に輝く虹の花火ができたの。


「そう。こんな感じに!」

ゆきちの持つツボからキラキラと流れ星みたいに光が溢れる。

そして








ボンっ…






「これが私の生きた証なの。」

「綺麗…」
「でもさ」

「ん?」
寝転がったゆきちは嬉しそうに私を見た。

「これってさ…」

「ん??」


その時のゆきちの笑顔は曇り一つなく輝いているのを見たら、それは単なるツボ錬金の失敗だよだなんて言えないし、第一室内で花火やっちゃダメだし、彼女の2年間の旅の成果がなんか無駄になっちゃうと思って、ああ、なんて人生って面白いんだろう「ボクは死にましゃん!50年後のキミを、今と変わらず愛してる!」という武田鉄矢の有名シーンが思い浮かんでは消えていき、時間っていつの間にか過ぎてっちゃうから、もっと色々やらなきゃな〜っと感じた港町レンドアの昼下がりの出来事だったとさ。







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